SPECIAL INTERVIEW 2020

荒川良々 レコードの日 SPECIAL INTERVIEW 2020

毎年、レコードの日のお楽しみとなっているイメージキャラクター企画。ミュージシャンは勿論のこと、各界のアナログレコード・ファンにお声がけしてメインビジュアル撮影とともにコレクションに馳せる思いを語ってもらうのです。
世界じゅうのみんなが傷だらけとなった2020年はこの人のリスニングトークで癒されるしかない!あちこちのライブやクラブイベントでの目撃情報最多なアクター、荒川良々さんの等身大リスナー遍歴、コレクションへのお気持ち、そしておうち時間とアナログレコードの素敵な関係までゆったりと語っていただきました。

インタビュー/文:宮内健
写真:平間至
ムービー:岡川太郎
撮影協力:平間写真館TOKYO / HMV record shop 渋谷


──良々さんの姿は、スチャダラパーやTOKYO NO.1 SOUL SET、スカフレイムス、クールワイズマンをはじめ、様々なアーティストのライブ会場やイベントなどでよく目撃しておりまして。また、時々ご自身でもDJもされてますよね。

荒川 知り合いのバンドとか、友達のイベントとかで呼ばれて、たまにDJをやらせてもらったりするんです。でも、「俳優がDJとかやってるんだ」って感じで、カッコつけてるみたいに見られることもあって。


──いやいや。良々さんは、純度の高い音楽好きが集まる場所で、本当に音楽を楽しんでいる印象があります。

荒川 そうですかね。自分としても、チャラけた感じでやってるつもりはないんですけどね。でも、僕の風体もあるのか、「荒川くん、クラブいってるんだ~?」みたいな(笑)。


──全然そんなことないですよ!(笑)。レコードや音楽への愛情の深さから、この度「レコードの日」のイメージキャラクターに任命された良々さんに、アナログレコードへの思い入れなど、いろいろお話を伺えればと思います。まずは、ご自身の音楽遍歴から伺いたいんですが。

荒川 僕には姉が二人いまして、姉が聴いていた音楽を一緒に聴いてました。その頃はやっぱりアイドルですかね。松田聖子さん、中森明菜さん、小泉今日子さんあたりが好きでした。他にも、普通にザ・ベストテンとかテレビの音楽番組で流れていた曲とかをよく聴いてましたね。あと、お盆に母方の故郷に行くと、いとこのお兄ちゃんが長渕剛が西武球場でやったライブのレコード(『SUPER LIVE IN 西武球場』)を聴かせてくれたり。


──少し上の世代のきょうだいや親戚がいると、いろいろ影響を受けやすいでよね。

荒川 そこから音楽を聴くことに芽生えて、テレビで歌はよく聴いてたけど、自分でアイドルのレコードを買うまでには至らなかった。中学生の頃に、地元の佐賀に貸しレコード屋ができたんですけど、そこから自発的に気になったレコードやCDを借りるようになったんです。


──その頃よく聴いていたのは?

荒川 ユニコーンとかブルーハーツとか。ちょっと後にスチャダラパーが出てきて。『宝島』を読んだり、とんねるずとか大槻ケンヂのオールナイトニッポンを聴いたり。高校はバス通学だったので、自分でカセットテープを編集して、ウォークマンで通学途中に聴いてました。好きな子に、自分が編集したテープをあげたりね。


──レコードやCDの貸し借りがあったり、ダビングしたのをプレゼントしたり、音楽の情報交換もよく行われてましたよね。そんな良々さんが、アナログレコードを買うようになったきかっけは?

荒川 高校卒業して福岡に出てからですね。専門学校に通ってたんですけど、輸入のCDショップとかレコード店に通うようになったんです。映画『ドゥ・ザ・ライト・シング』の影響からパブリック・エナミーを聴くようになって、ヒップホップにハマっていって。


──アナログレコードを買うようになったのは、ヒップホップからの影響が大きい?

荒川 そうですね。当時は専門学校に通ってたんですけど、だいたい毎週水曜に新譜が入るからバイト前にレコード屋を覗いて。その頃は、12インチシングルを買うことが多かったですね。レベルが大きいっていうのもあるし、リミックスが入ってるシングルが好きだったんですよね。店で試聴させてもらいながら、DJプレミアとかピート・ロックとか、プロデューサーが誰々って覚えていって。じゃあ今度は同じプロデューサーのこっちを買ってみよう、みたいな感じで、アーティストだけじゃなくだんだんと知っていって。


──福岡に住んでいた当時、よく通っていたショップはありますか?

荒川 輸入盤店の「TRACKS」によく行ってましたね。あとはレゲエのDon’s Record Martでも、いろいろと教えてもらいましたね。


──ターンテーブル買って、アナログも買ってって、学生にとっては結構高価なものだったんじゃないですか?

荒川 だから、バイトは馬鹿みたいに入ってましたね。学校はほとんど行かないで(笑)。居酒屋で夕方5時から夜中の3時まで働いて、そのバイト代でまたレコード買って。バイトで思い出しましたけど、福岡時代に友達がイベンターの会社に勤めていたので、僕もコンサートのバイトもやらせてもらったことがあったんです。ビースティー・ボーイズやジャングル・ブラザーズを福岡空港まで迎えに行ってました。もちろんライブも観ることができて。あとは、UFOが全盛期な頃で、ガリアーノとかUS3なんかかも福岡に来てましたね。


──ビッグネームと良々さんに、意外な接点が(笑)。それこそ当時、ヒップホップはもちろん、渋谷系の元ネタからアナログを漁っていくみたいな文化もありましたからね。

荒川 そうでしたね。いろんな友達や先輩と知り合って、あれこれ教わって。そんな感じで福岡で馬鹿みたいにアンテナ広げすぎたんでしょうね。学校に2年半行って卒業してから、居酒屋のバイトでお金を貯めて、3ヶ月間ニューヨークに行ったんです。それこそ『REMIX』とかを読んで、情報を漁って。


──語学留学とかDJになろうとか、何か目的があったんですか?

荒川 いやいや、何も考えないでふらっと。よくある、自分探しみたいな感じで(笑)。向こうには誰も知り合いがいなかったので、3ヶ月間ずっと散歩とレコード買いに行くぐらいで。だから途中イヤになっちゃったんですけどね。ただ、その頃は路上でミックステープとかも売ってたから、あれこれ買ったり。あとはクラブに一人で遊びに行ったり、フライヤーも集めたりして過ごしてましたね。


──さて、今回良々さんには好きなレコードをご持参いただきました。ラインナップを見ると、荒川良々という人間を作り上げてきた要素を見て取れる感じです。

荒川 ちょっと役者のレコード多め、みたいなね。


──役者多めだし、ビズ・マーキー多めっていう(笑)。ビズはどうして好きになったんですか?

荒川 向こうのヒップホップって、どうも怖いってイメージがあって。だけど、デ・ラ(・ソウル)とかビズはMVを観ててもふざけてて、そういうところから好きになっていったんですよね。ビズからは、キャラクターとしても結構影響受けてると思います。踊りとかも可愛いし(笑)。


──今回持ってきていただいた中で、自慢の一枚というと?

荒川 スチャダラパーの『WILD FANCY ALLIENCE』のピクチャー盤ですかね。これは僕がまだ福岡に住んでる頃、友達が東京に遊びに行って。ちょうど渋谷にHMVができた頃で、福岡でまだ売ってなかったスチャダラパーのを買ってきてもらったのを、今も大事に持ってます。それこそ自分がもともとファンだったスチャダラとかソウルセットの川辺さんとは仲良くさせてもらっていて。そんな憧れの人から、「荒川くん、これいいよ」ってMIX CDもらったりするのはありがたいですよね。


──勝新太郎や森繁久弥といった俳優が歌うレコードや、立川談志、ドリフターズ、タモリのような芸人が出したレコードなどもありますね。

荒川 この辺のレコードはわりと古本屋なんかで見つけることが多いですね。あと、守屋浩「僕は泣いちっち」みたいな昭和30~40年代の歌謡曲は、昔の映画を観て知ることがよくあります。いい曲だなって思ってYouTubeで調べて、そこからアナログを買うっていう流れで。


──『NHK 日本の野鳥~森へのいざない』という珍しいレコードもありますが、これは?

荒川 福岡に行った時に、300円で買ったんですけど、音楽もなにもなく、ただ野鳥の鳴き声をフィールドレコーディングしたものなんですけどね。聴いてみます?(レコードに針を落とす)。


──本当に鳥の鳴き声だけだ(笑)。聴いてるうちに、結構気持ちよくなってきますね。

荒川 以前に福岡で、川辺さんとすごくいいスピーカーでレコードを聴くってイベントを見に行ったことがあったんですよ。その店に置いてあったのがこのレコードで。気になって、買ったんです。


──なるほど。ちなみに、普段からよく買うジャンルはなんですか?

荒川 昔から変わらず、ヒップホップやソウル。あとは最近は昔の歌謡曲なんかのレコードも多くなりましたね。


──よく利用するショップなどはありますか?

荒川 まぁ、普通に「HMV record shop」とか「ディスクユニオン」とかはよく行きますね。あと最近は、大阪に「ハワイレコード」って店があるんですけど、欲しい盤があったら探しますよって人がいて。あとは自分でも、MIX CDを聴いて気になった曲を調べて、そのネタを探したりっていうのはたまにやってますね。


──最近だと、ご自身で買うのは7インチが多ですか?

荒川 そうですね。やっぱり7インチは重くないから。僕、パソコン持ってないので、DJやるときもレコードかCDなんです。それに最近は7インチの再発もよく出てるし、友達のバンドも7インチを出したりすることも多いですし。


──今回の持ってきていただいた中だと、最近のものはオシリペンペンズとか坂本慎太郎さんの7インチも入ってますね。

荒川 好きなバンドやアーティストがアナログを出してくれると嬉しいし、買っちゃいますね。オシリペンペンズは、友達ですけど、今まで聴いたり観たことないライブをやるんでほとんど追っかけです。


──たとえば、いいレコードと巡り合うコツみたいなのはありますか?

荒川 うーん。「よし、レコードを買いに行くぞ!」って意気込んでる時じゃなく、「ちょっと時間空いたから、ちょっとレコード屋でも覗いてみるか?」って感じの時に、たまたまいいレコードと巡り合うことが多いかも(笑)あとは、試聴できる店だったら試聴させてもらうのがいいですよね。下北沢の劇場で芝居を観に行ったり出てる時なんかは、空き時間にJET SETを覗いたりして。試聴して、ジェイムス・ブラウンとビギー(ノトーリアス・B.I.G.)のマッシュアップがあるんだって知ったり(Amerigo Gazaway『THE B.I.G. PAYBACK “LP”』)。本当たまたまですね、出会いは。


──しかし、今年はコロナ禍で自粛要請期間などもあって、良々さんも自宅にいることが多かったと思いますが、どのように過ごされてましたか?

荒川 音楽を聴く時間は増えましたね。テレビのワイドショーとか観てても、イライラして疲れてくるんですよね。外に出るのも散歩する時ぐらいしかなかったから、リフレッシュする感じで、音楽聴きながら本を読んだり、ご飯作ったりしてました。そういう時は、ヒップホップより、のんびりできるユルめな音楽のほうが多かったかも。あとはサルサとか、タイの音楽とかも聴いてましたね。


──どこにも旅行に行けない分、遠くの国の音楽を……。

荒川 そうかもしれないですね(笑)。あと家にいる時間が長いので、自宅にあるレコードを改めて聴き返すことも増えました。それで一枚のレコードをじっくり聴いてみて、改めて歌詞の意味に気付いたりすることもありますね。スチャダラパーなんかもそうですけど、聴き直すと歌詞の意味が今までと全然違う捉え方ができたり。


──それこそ、『WILD FANCY ALLIENCE』に収録されている「ヒマの過ごし方」なんて27年前に作られた曲ですけど、“ヒマを生き抜く強さを持て”というリリックが、今の時代にすごく刺さる。

荒川 そうですね。とくに緊急事態宣言で外に出るなって言われてる時に、新しい聴こえ方があるような。自分と向き合う時間が多いから、聴き慣れた音楽でも新しい発見があるというか。


──若い世代の人たちにもアナログレコードが普及しつつありますが、良々さんが思うアナログレコードならではの魅力ってなんでしょう?

荒川 まずは、ジャケットが大きくてデザインを楽しめることですかね。昔は買ったらすぐにズボンの裾に、ジャケットの端をこすりつけてシュリンクのビニールを綺麗に開けて、中のレコードのニオイを嗅いでましたね。とくに70年代のレコードのデッドストックとか。


──なんか輸入盤独特のニオイってありましたよね。

荒川 なんか、その匂いとかやけに覚えてますね。さすがに今はニオイは嗅いでないですけど(笑)。あと、レコード聴くのって、一回一回ターンテーブルの上に盤を置いて、針を落としてっていう作業があるんですよね。とくに7インチなんて1曲ずつにそれをやらなきゃいけない。今の時代は、全部が座ったままできてしまうじゃないですか。買い物だって携帯だけで済んじゃうし。DJだってパソコンでやったほうが楽だよって、みんなに言われるんです。だけど自分にとっては、アナログレコードの不便さというか不親切さが、なんだか好きだし、しっくりくるんですよね。

荒川良々 PROFILE:http://otonakeikaku.jp/profile/profile_arakawa.html

 
 

 
 
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