COMMENT 2018

久保田麻琴

やはり、じっくり聞く音源はレコードで聴きたいのです。
ハワイの救世軍で何気に買ったトニーベネットのモノラルのレコード。
Tony Bennett / For Once in My Life
1年以上、毎日のように聴き続けたんじゃないかな。
ステレオではこの感じが出ない。
なんとこんな歴史的名盤のCDリイシューも日本ではなかったようだし、あってもこの感じは出ないだろうな。
今回リリースする[Kanasu Remixes]の2枚もレコードでじっくり聴いてもらいたい。

[Kanasu Remixes] NAHKNY-TIIMATOH / SARAHAMA NU HAIMA
side A 「NAHKNY-TIIMATOH」
沖縄民謡の基本、ナークニー(宮古根)を歌うのは戦後最高の民謡歌手、山内昌徳。100年に一度の美声と言われた声の持ち主。その美しく軽快なノリと発声は沖縄のナット・キング・コールと言っても過言ではない。
このトラックをとても丁寧にリミックスしたのは、様々な作品やプロジェクトで知られる才人、オオルタイチだ。ガムランを思わせるシンセ、ところどころに聞かれる声などを変調させたエレクトロな装飾は、元のトラックと抜群の相性で、とてもラジオ・フレンドリーだ。
side B 「SARAHAMA NU HAIMA」
沖縄でも最後まで民間の祭祀を厳格に維持した場所、宮古島の離島、伊良部島の港、佐良浜。そこに伝わる蟹の脱皮を唄うこの歌は、祭祀を行う司(ツカサンマ)の女性たちが拝所から拝所に歩いて移動する時に歌われる道行歌だ。脱皮をして若返る、生き返るというイメージを人間に重ね合わるポジティブな唄。
これを宮古島のファンク・ジャム・バンド、Black Waxのミキオがトロピカル・モードでリミックスする。メンバーのマリノもサックスで参加、私がベースを手弾きし、リズム・ループも組んだが、後半で使われるメインのドラムパートは名手伊藤大地によるもの。

[Kanasu Remixes] INKYARA NU UTA / RUJIGAKU x TAHFAHKU
side A 「INKYARA NU UTA」
石垣島白保で毎年旧暦6月に行われる豊年祭の歌。頭に植物の蔦や葉で作った冠をかぶり、男女が円陣を作って賑やかに歌い踊り儀式は南洋的な光景を感じさせる。鳴り続けるプリミティブな銅鑼の音と手拍子がとてもトランシー。11拍子(4-4-3)という微妙な変拍子、それに古代を感じさせる魔法の旋律が魅力的だ。左右にクンビアとブラジル北東部のコーコのループを不規則に配し、怪しいチューニングの低音ベースを指弾きしリミックスを行った。
side B 「RUJIGAKU x TAHFAHKU」
チャルメラの響きも賑々しい路次楽は、琉球王朝時代の中国/福建省から影響を充分に感じさせる。そしてもう1曲の打花鼓も帰化人たちの学問所で、首里や薩摩役人を接待するために演じられた曲ということだ。エキゾチックな響きとリズムのこの2曲を、コザの銀天街に拠点を置くダブ・ユニット銀天団のエンジニア/トラックメイカー、ハリクヤマクがトリッキーにドープにリミックスした。20歳代にしてこのリズムの深さ!

久保田麻琴

[Kanasu Remixes] NAHKNY-TIIMATOH / SARAHAMA NU HAIMA

久保田麻琴が、沖縄民謡・古謡の貴重な音源をセレクト&コンパイルしたCD「かなす」シリーズ。そこに収録されたリミックス・トラックを7インチでシングルカット。山内昌徳の名唱「ナークニー」を才人オオルタイチが、伊良部島の古謡をBlack Waxのミキオと久保田麻琴がリミックス。

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[Kanasu Remixes] INKYARA NU UTA / RUJIGAKU x TAHFAHKU

久保田麻琴が、沖縄民謡・古謡の貴重な音源をセレクト&コンパイルしたCD「かなす」シリーズ。そこに収録されたリミックス・トラックを7インチでシングルカット。プリミティヴでエキゾティックな沖縄の伝統音楽が久保田麻琴と、コザのDUBバンド銀天団のハリクヤマクによりドープに生まれ変わる。

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