SPECIAL INTERVIEW 2023

PUNPEE×ハナレグミ レコードの日 SPECIAL INTERVIEW 2023

1957年に日本レコード協会が“レコードは文化財”ということで文化の日である11月3日を“レコードの日”として制定。そこからヒントを得て東洋一のレコード工場である東洋化成が、レコードの魅力を広く知ってもらうためにアナログレコードのお祭りとして始めた“レコードの日”も今年で9年目となります。
毎年恒例のお楽しみとなっているアンバサダー企画、今年はさまざまに変化していく父と娘の12年間の物語を描いたストーリーが大きな話題となった相鉄東急直通記念ムービー『父と娘の風景』の楽曲『タイムマシーンにのって/家族の風景』を7inchでリリースされるPUNPEEさんとハナレグミの永積 崇さんによるスペシャルな対談が実現!
それぞれ思い入れのあるレコードを持ち寄っていただき、今回の楽曲に関するエピソードも交えながら、お互いのルーツやアナログレコードとの向き合い方を語っていただきました。そこから垣間見えた物腰柔らかなお二方の美学と哲学、音楽愛溢れる貴重なエピソードをまるで深夜ラジオを聴いているような、絶妙な心地よさと温度感でお届けいたします。

インタビュー/文:DJサモハンキンポー
写真:沼田学
撮影協力:Manhattan Records


── 『タイムマシーンにのって/家族の風景』について色々お伺いしたいんですが、本作の楽曲に関する取材って今回が初ですよね?

PUNPEE: はい。この楽曲に関してもちゃんと二人で話すのは今回が初めてなんですよ。メールではもちろんやりとりしているんですけども。


── お二人がお会いするのは初めて?

PUNPEE: 7〜8年前に中野のheavysick ZEROでたまたま会って。それもRADWINPSの野田洋次郎氏と一緒に来るっていう謎の、、、

永積: ちょうど僕が洋次郎に楽曲提供を頼んでたから、その時期よく一緒に飲んでたんですよ。「今日PUNPEEがDJやってるから行かない?」って連絡が来て。でクラブの階段でちょっと飲みながら。

PUNPEE: フロアが地下にあって、二人が階段で降りて来たとき下界に降りてきたように見えました(笑)

永積: あはは。そんな事ないでしょ。会うのはそれ以来かな。お互い忙しい時期でタイミング的にやっとという感じ。今回の楽曲のCMが始まった時期に、僕はスカパラでメキシコツアーに行っていて。


── スカパラはメキシコですごい人気みたいですね。

永積: そう、めちゃくちゃ人気あって。飛行場着いたら、誰が教えたのかわかんないけど100人くらい出待ちがいてびっくりしました。ライブも2万人くらい入るスタジアムで、もうビッチリ客がいて。

PUNPEE: ワンマンですか?

永積: えっと、Vive Latinoってフェスで、メキシコだけじゃなく、アルゼンチンとかラテンの国々のミュージシャンが集まるフェスに何故か海外枠でスカパラとレッチリが出たのね。

PUNPEE: あはは。

永積: すごくない!?でもほんとに、たまげるぐらいでかいとこで。クイーンの『Bohemian Rhapsody』の映画のLIVE AIDのサイズってこれだーって。

PUNPEE: すごいわかりやすいですね。

永積: でまたオーディエンスがラテン系の方たちだからアツい。持ち時間をオーバーすると罰金になっちゃうんだけど、その時遅れてスタートしたんですよ。で巻かなきゃと思いながらライブの途中で出て行って、一曲歌い終わって軽くスペイン語でMCしようと思ったら、知らない曲をオーディエンスのみんなが歌い始めて。お客さんもテンション上がって「俺たちの歌も聞いてくれ!」みたいな。

PUNPEE: すごいですね。

永積: もうびっくりしちゃって何していいかわかんなくなっちゃって、パッとスカパラの谷中さんを見たら「これだぜっ」って感じで嬉しそうに頷いてた。感動でしたけどね。
ほんとに自分達の生きる糧として踊りに来てるんで、オーディエンスの受け止め方が日本と違うんですよ。だからこっちも引き上げられるっていうか。

PUNPEE: 生活の一部みたいな。

永積: そう。でフェスもやっぱり安くないからみんなそのフェスの為にお金貯めて来てて、その分楽しんでる。だから中途半端な演奏したら許さねえって感じというか。

PUNPEE: 曲を知らなくてもグルーヴィーだったら全然大丈夫。

永積: ビキニの姉ちゃんが肩車されてワイワイやってて「わー本物だ!」って。

PUNPEE: 日本だとないですもんね、肩車は。

永積: でもヒップホップとかだったらそういう意味でタフなシーンとかもありそうですよね。

PUNPEE: そうですね。それこそ知り合いしかいないぐらいの小さなシーンだった時は、もしかしたらそうだったかもしれないですね。人気とかじゃなくて、すげえライブがかっこいい人がプロップスというか評価をもらえるじゃないですか。知名度が出てきたらやっぱ曲を知ってたらアガるとか、色々周りのカルチャーが変わってきましたけど、やっぱ自分が最初にいた場所はもっとシビアな感じでしたね。ステージが良くても腕組んで頷くだけみたいな(笑)

永積: 昔clubasiaでイベントに呼んでもらって、僕以外もそれこそRUDEBWOY FACEさんとかCOMA-CHIさんとかで、本番前の袖の顔つきが「これからこの人たち戦いにいくのかな」っていうぐらい自分なんかのステージ袖の雰囲気とはちょっと違ってて、それがすごくいい顔でアツかった。

PUNPEE: その当時に比べたら今は色々変わったのかもしれないですけど、熱量がすごかった時代というか。ネットもなくて「このあとイベントあるらしいぜ」ぐらいの口コミで行くしかないんで、じゃあ来たからには楽しもうっていう熱量はあったのかな。いまも違う形での熱量はあるんですけど。

永積: まだどういうふうにこの場を楽しむのが正解なのかっていうのを探ってた。


── シーンが成熟する前というか。

PUNPEE: お客さんが少ない時はライブっていうかちょっとした品評会みたいな感じでしたね。

永積: いくつくらいからそういう場所に出てたんですか?

PUNPEE: 高校卒業したぐらい、2001、2年くらいですかね。DJ始めて、ライブ始めて、っていう時代でした。

永積: 周りにヒップホップをやってる人っていたの?

PUNPEE: いや地元とかには全くいなかったですね。クラブ行って、こんなにいるんだ!ってなってそこで色々知るみたいな。同時に高校の同級生のGAPPERと弟の5lack(S.L.A.C.K.)とPSGを始めて。当時はCDJがなくて、CD-R焼いたりもできなかったんで、ライブはアナログで他の人のインスト2枚使いでやってましたね。

永積: DJ始めたぐらいから自分たちでも曲書いてライブもするっていう風にイメージしてたの?それとも最初はDJだけ?

PUNPEE: 元々宅録で遊ぶのが好きだったんで、最初はMTRとか遊びで作ったものを披露プラス自分のソロDJとしての活動って感じでやってましたね。なので、オリジナルの曲をライブで披露しづらい状況が何年か続いてた気がします。で、これバックDJの原島さんも言ってたのですが「MDだったらかけれるじゃん!」てなってMDのフォンのところに赤白のケーブルを繋いで、レコードの曲やった後にMDでオリジナルの曲をかけると、MDのピッて音が入るんですよ(笑)

永積: あはは。

PUNPEE: 「じゃ次の曲」って言ってピッが入るんですよ。そういうカッコ悪い時代でしたね(笑)


── あの音独特だから分かりますよね。MDじゃん!って。

PUNPEE: そういうアナログからCDの転換ぐらいの時にやってましたね。


── 今はパソコンでDJされてますよね。

PUNPEE: そうですね。今DJはUSBに音源入れてCDJに刺すとかけれちゃうんで。


── その時から考えるとすごい進歩ですよね。

PUNPEE: 昔はレコ持ちっていう職業があるぐらいでしたもんね。グレードが上がってくるとレコ持ちが雇える、みたいな。結構レコ持ちから有名になる人とかもいて。


── バンドでいうボーヤから、みたいな感じですよね。

永積: でも何かそっちの方がかっこいいな。アパレルのお店やってる知り合いの人で、昔川辺ヒロシさんとかのレコード持って一緒に付いてたとか華やかな話聞くと、バンドマンについてる子たちはそうはならなそうな感じっていうか。なんかブルーズしてる感じあるよね。


── PUNPEEさんはレコ持ちやったことあります?

PUNPEE: ないんですけど憧れてました。どっか縦のラインに入らないと這い上がれない時代って思っちゃってて。


── 縦割りの体育会系みたいな。

PUNPEE: やっぱどこかに所属してちゃんと積み重ねていかないと、みたいに思ってたんですけど、ネットが結構変えちゃって自由に曲出せるようになったんで。


── 今も継続してお二人はレコード買われてますか?

PUNPEE: 頻度は減りましたけど、アルバムとかジャケのデカさ込みで、ほんとに好きなものだけ買う。昔はDJ用にインストが入ってるからとか、アルバムより音圧があるからっていう理由でシングル盤買わなきゃっていうのもあったし、ここら辺の宇田川町あたりで月何十枚も買ってました。あとは楽曲制作のヒントだったりとか。

永積: 僕は月に2~3枚くらい買いますね。最近やっとレコードをいい感じで聴けるような環境になってきたんですよ。引っ越しも多くて、引っ越しするたびにシステムが変わるのが嫌で、ちゃんと落ち着いたらいいものを揃えてゆっくり聴きたいなと思ってたんですけど。今日持ってきたジュリー・ロンドンってジャズシンガーのレコードはおじいちゃんにもらったものなんです。

Julie London / I Left My Heart In San Francisco (1963, Liberty)

永積: この人かなりスモーキーな声なんですけど、バンド始めた時に女性の声みたいに歌いたいなと思ってこの人ばかり聴いてた時期があって。高校生くらいの時にこのレコードと一緒にスピーカーをおじいちゃんにもらったんですよ。1950年代に流行ったオーディオで、ずっと実家に置いてたのをやっと持ってきて。たまたま真空管のスピーカーを作ってくれる人と出会って、リペアしてもらったんだけど、それがすごく良くて、レコードを聞くのがめちゃくちゃ楽しい。こんな音だったんだ!って。
おじいちゃんが聞いてたであろう環境でやっとジュリー・ロンドンが聞けて、そういうのから始まって今やっと家でレコードを聞いてますね。
入ってるのは全部ジャズのスタンダードで、アレンジがとっても良くて、いわゆる60年代のストリングスとかがゴージャスに入ってるような、優雅なんだけど儚い音。自分のやってる音楽の根幹に、煌びやかな美しさとか華やかなんだけどこの音楽には終わりがあるっていうのがあって。でもレコードの良さって、終わりが来るってことだなっていつも感じる。

PUNPEE: 確かに。裏返して、最後の内縁部分の余韻もいいですよね。

永積: そう。で、うっかり寝ちゃって、ハッと起きた時にバツッ、バツッって音がして。ああいうのも好きだったりして。


── 侘しさも含めての良さというか。

永積: そう。なんか、綺麗なんですよね。レコードで聞く時の方がより華やぐ音ってあるなって思ってて。

PUNPEE: DEV LARGEさんが亡くなった時に、ドミューンで配信があって、その時自分のバックDJをやってくれている原島さんがアナログでDLさんが関わった曲だけでDJやったんですけど、最後レコードの内縁部がアップされてバツッ、バツッってなって終わってて、切ね〜みたいな。儚い感じの良さがあるなと。

永積: アナログって針を通してそのもの自体がリアルタイムで演奏してるってことだから、ライブに近いし、今の時間と繋がりが生まれていいよね。

PUNPEE: 今日持ってくるレコードの資料をメールでもらって聞いたんですけど、“Fly Me To The Moon”とか“The End Of The World”とか知ってる曲も入ってました。

永積: 女優を目指してたんだけど、女優で立ち行かなくて、ジャズシンガーになって、ジャズシンガーの方が良かったっていう。俳優さんが歌う歌って独特の面白さがあるよね。


── 当時って美空ひばりさんとか笠置シヅ子さんとかもそうですけど、女優をやりながら歌を歌うっていうのが普通だったっていうのもありますよね。そう考えると多才ぶりがすごいなと思います。


── 今回どういう経緯で曲ができたのかをお聞かせいただけますか。

永積: 今回は相鉄さんからPUNPEEくんとご一緒する機会をいただけて。


── 相鉄さんからお二人でこの曲をっていう指名があったんですか?

PUNPEE: そうですね。お話をいただいたときにはイメージが大体決まってて、ほぼアイデアも出来上がってるし、キーも合ってて、えっ、できてるじゃないですかこれ、ってなって。そこからちょっと歌い直したり編曲し直したりしました。


── 永積さんは歌い直されてるんですか?

永積: 僕は歌い直してはないですね。

PUNPEE: テンポはちょこっとだけ早くなってますね。ハナレグミさんの曲のデータをパラでいただいて、自分の曲の尺をいじって、逆に自分の方の曲のテンポを少し遅くしたりして。ジャケを書いてもらった時に、すげー7inchっぽいな、映えそうとか考えてて、レコードの日ってタイミングもあるしアナログにするのめちゃくちゃいいんじゃないかと。


── お互い8年前に会われてそこから時間を経て、今回また再会したみたいな感じなんですね。

PUNPEE: もちろん、「家族の風景」はリアルタイムで聴いてた曲だったんで嬉しかったですね。弟が神保町のジャニスで色々借りてきた中にSUPER BUTTER DOGとかハナレグミさんがあって。

永積: えー!ジャニスってなかなかマニアックな。無くなっちゃいましたけどね。。。

PUNPEE: 「家族の風景」はアナログにはなってないですよね。

永積: なってないんですよ。ハナレグミ自体が実はレコードをそんなに作ったことがなくて、『だれそかれそ』ってカヴァーアルバムと『深呼吸』ってシングルをアナログで切ったぐらいで。ただ、ずっとアナログでアルバム出したいねって今年はよく言ってたから、今回も良いきっかけになるっていうか、やっぱアナログ出した方がいいってことよね、みたいな。ジャケット大きいだけでも楽しいし、自分も環境が整ったから余計欲しくて。CDでは自分の曲はほとんど聞かないんですけど、アナログだったら聞き返しそうな気がするんですよね。

PUNPEE: 今日対談があるよって言った人ほぼ全員に「昔のやつアナログで出してって言っといてよ」って言われて(笑)

永積: 嬉しい。SUPER BUTTER DOGの時は何枚か出してはいるんだけど、ほんとここ最近はヴァイナルの方が作ってるって実感がすごい出る。仲良いエンジニアの人とかに、ダイレクトカッティングした友達の作品とか聞かせてもらうと、とびきり音が良くて。


── 音楽性的にもアナログで聴きたい音だと思います。録音で入ってる空気感もアナログにすることでより芳醇な香りがするっていうか。

PUNPEE: うまくいってるアナログの音ってでかい音で聞くととんでもなくいい時ありますもんね。Illicit Tsuboiさんってエンジニアの方に聞かせてもらったエリカ・バドゥのシングルがあるんですけど、すげえ、なるほど、このことか!っていう。


── カッティングエンジニアさんの性質にもよると思いますし、プレスする盤の材料によっても変わってきたり、いろんな要因が重なって音が決まってきますからね。

永積: 沼ですね。

PUNPEE: それからスピーカーとケーブルと。

永積: 金があれば喜んで浸かりたい沼ですけどね。今日持ってきたレコードは?

PUNPEE: 自分が初めて買ったレコードがこれだったんですよ。98年のシングルですね。高校一年だったんですけど。

Beastie Boys / Body Movin’ (1998, Grand Royal)


── マーキングシールが貼ってありますね。

PUNPEE: レコードの頭出し用に盤面に印つけてますね。あとは真ん中のセンターホールがカポカポのレコードって結構あって、カポカポだとスクラッチしたら飛んじゃうんで、センターホールにシールを貼ることによって空間を埋めるというか詰めてるんですよね。
結構ヒップホップとかダンスミュージックって他とちょっと違うレコードの使い方というか文化があって、かけてる曲がバレないようにラベルを剥がして違う曲の貼ってたりするんですよ。このかっこいい曲誰のだろうってブースに見に行って、この人だ!ってなって買ってみたら全然違くて、ちげーじゃん!、みたいなこととか昔結構あって、そういうカルチャー込みで面白い。DEV LARGEさんとかもラベル黒く塗ったりしてて、今考えたら変な時代でしたよね。


── 今だったら逆にDJも「これなんすか?」って聞かれたらちょっと嬉しかったりするじゃないですか。

PUNPEE: そうですね。嬉しいし、全然教えますね。昔はここに辿り着くにはまだ早いぞ、みたいな(笑)

永積: 黒く塗っちゃって自分でもこれなんだっけ、ってなんないのかな(笑)。あれ、違った、みたいな。

Various / The George Mitchell Collection: Volumes 1 – 45 (2008, Fat Possum)

永積: これはこれから聞こうと思ってて、詳しくはわかんないんだけど、ジョージ・ミッチェルさんコレクション。この方が色んな南部のローカルなカントリー・ブルースマンの音源を録ってて、このボックスに入ってるの45枚とも全部違う人の7inchなんですよ。

PUNPEE: 発掘系なんですね。

永積: そうそう。ギターでもなくて、ディドリーボウって一本の弦を弾いて歌う人とか、フルートやりながら歌う人とかもいて、色んな人のブルースを収集してるんだけど、この時代の音ってレコーディングも粗悪だから、色んな環境音とかも入ってて、レコードにほんと合うなっていうか、正直CDとかで聞いたらつまんなく思っちゃうわけ。一枚一枚聞いてると個人面談してるような気持ちになってきて。

PUNPEE: 向き合って面接してるみたいな。

永積: そう。ヒップホップとかブラックミュージックってやっぱり個人の衝動力があるでしょ。今Netflixでヒップホップの歴史を一人の人がたどっていく『ヒップホップ・エボリューション』ってドキュメントがあるんだけど、あれがすごい好きで。超有名な人から始まっていくんだけど、だんだんものすごいローカルスターみたいになっていって、あいつは誰々さんちの庭で超ロックしてたみたいな。そうなってくるとすごい楽しいっていうか、ブルースってほんとそうで。こういう人たちをレコードで聞くっていう醍醐味があるなあと思って。

PUNPEE: こんなにいっぱいあると楽しいですね。次はこの人!みたいな。CDだと一回再生したら終わりで流れちゃう。整理されてなかったし、音楽で食うとかそういう時代じゃなかっただろうから、趣味で一曲録ってみようか、くらいの感じですよね。

永積: 10ドルくれるなら歌ってやってもいいよ、みたいな(笑)。

PUNPEE: それを発掘する人がいるってのがすごいですよね。

永積: そう。この当時はお金持ちの白人の人がポータブルのレコーディング機材を持ってて、大体ブルースマンの幻音源ってなると基本的にそういう人たちが録ってる。レーベルがお金出して作るってる人っていうのはB.B.キングとか有名な人くらいで限られてるんだけど、それ以上にほんとにたくさんのブルースマンがいたんだよね。


── 自主制作の沼みたいな。

永積: 今でもそういう人たちの未発表音源がポロポロ出てきてるのは、その街のお金持ちが録ってたのを孫かなんかが「うわ、なんだこれ」って屋根裏とかから見つけ出してきた、みたいなことがアメリカではあるんじゃないかな。

PUNPEE: いいな〜。そういうのラップでもやりたいですね。

永積: カセットでしか出してないのとかもあるでしょ?

PUNPEE: ありますね。友達に配っただけのやつとかはあるんで、将来そういうディガーが現れたら狙われるかもしれない。

永積: 僕最初にPUNPEEって名前を知ったのが、震災の2年後くらいに吉祥寺で古本屋に入った時にお店でかかってて。


── どこの古本屋ですか?

永積: 百年かな。古本探せないくらいリリックが飛び込んできて、このラップの人すごいなと思って。何探してんのかわかんなくなっちゃって、お店の女の子に聞いたらPUNPEEって言われて。で、なんかにメモったら「あ、これカセットなんで多分ないです」とか言われて(笑)。

PUNPEE: 謎のマウント(笑)。

永積: その時のはPSGだったのかな?

PUNPEE: もしかしたら限定で出した自分のMIX CDだったかもしれないですね。海外とか、そのレベルで動いてる人を発掘してるってことですもんね。その人の実家とか訪ねて、昔の音源とか探して。うわ、怖いな、聞かれたくない(笑)。

DJ BUTCHWAX / HEE-HAW BRAYKS(1999, Dirt Style)

PUNPEE: これもヒップホップ特有の文化だと思うんですけど、スクラッチの音用のネタしか入ってないレコードとかシリーズで結構あって、これも『HEE-HAW BRAYKS』ってスクラッチする時のこすりのネタしか入ってなくて。細いコスリ溝がいっぱいあって、ここはドラムだけとか、ここはスクラッチ用とか。最後はループ溝になっててずっとウワーンって音がループするんですよ。で、バトルDJの方々とかはピッチをいじって音階を変えて楽器みたいに使われてて。ヒップホップ特有の文化かなあと思って持ってきました。ジャケットも粗悪な感じでブートっぽいもので、それがかっこいみたいな。
友達でカレー屋まーくんってカレー屋でDJの人がいるんですけど、その人はアナログでしかDJしなくて、CDJのスクラッチとアナログのスクラッチは結構違うという話になったんですね。アナログってスクラッチすると低音が出るんですよ。スクラッチは別に上手くなくても、お客さんとのグルーヴのリンクとして使ってるって言ってて、おもしれえと思って。確かにそこで音が飛んでもなんかカッコ良く成立する。飛んじゃった、でもアガるみたいな。グランドマスター・フラッシュが後ろ向いてレコード選んでる時にめちゃくちゃ針飛んだとしても、めっちゃ歓声が上がるだろうし、そこがフィジカルのかっこよさでもあるし、独特だなと思います。

永積: 確かに。DJも立ち振る舞いとか選盤してる姿含めてショーだもんね。自分も弾き語りとかやってて、曲によってチューニング変わったりするからスタッフが別のギター持ってきてくれてすぐ次の曲にパッと移りやすいんだけど、やっぱ自分でチューニング変えて次の曲行く時の動きをしてる方が、お客さんと一緒にこのライブを作っていくっていう隙が生まれる感じはある。

PUNPEE: 確かにそういうのと同じかもしれないですね。

永積: そういう間含め丁寧じゃなくていいというか。

PUNPEE: それ込みでショーみたいな。

永積: ヒップホップも急に音止めちゃって、なんで止めちゃうの〜みたいなのあるじゃん。

PUNPEE: それでもアガる、みたいな。いいですよね。

永積: そういうの含めて最高だよね。じゃあ、そろそろ二次会いきましょうか(笑)。

タイムマシーンにのって/家族の風景

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The Sofakingdom / Return of The Sofakingdom

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