SPECIAL INTERVIEW 2017

のん&堀込泰行

アナログレコードのもつ可能性や美しさを広めたい! という思いで立ち上げた11月3日 レコードの日 。三年目となる2017年は、堀込泰行さん、そしてのんさんにイメージキャラクターとしてご登壇願いました。堀込さんといえばキリンジ時代のクラシックスに加え、新曲YASUYUKI HORIGOME + D.A.N.『EYE』もレコードの日アイテムにエントリーしてくれています。そして、今年はご自身のレーベルも立ち上げたのんさんの第一弾シングル『タイムマシンにおねがい』はアナログでも発売され大人気盤となっています。
ここでは、メインビジュアル撮影時におこなわれたインタビューをお届けします。

取材/構成:宮内健
撮影:平間至
撮影協力:ココナッツディスク吉祥寺店、クアトロ ラボ


──今回はアナログレコードの祭典「レコードの日」のイメージキャラクターとして、のんさんと堀込泰行さんにご登場いただきました。お二人はこうして会うのは何回目ぐらいになるんですか?

のん 4回目……ですかね?

堀込 のんさんが「エイリアンズ」をカバーする前に練習をしたんですけど、その時に初めて会って。

のん 練習は2回やったんですよね。あとはレコーディングと、その後に一度インタビューでもお会いしてました。

堀込 じゃあ5回目か。もうお友達ですよ! と、言うようにしてます(笑)。

のん 嬉しいです(笑)。友達です! 大先輩ですけど。


──今回の撮影は、吉祥寺・ココナッツディスクの店内で行いましたが、とても和気藹々としたロケになりました。

のん すごく楽しかったです! アナログレコードがたくさん置いてあるお店に伺うのは初めてだったんですが、アナログレコードのジャケットって、面白い写真がいっぱいあるんですね。うなじと百合の花だけのジャケットとかありましたね。

堀込 あったね。あれ、なんてアルバムだろ?

のん お店の人に聞いておけばよかった(笑)。


──堀込さんは、アナログレコードというものに対してどんな想いをお持ちですか?

堀込 単純に音質の面で、ヴォリュームを上げても耳が疲れない。近所迷惑にはなるかもしれないけど(笑)。そういう部分もありつつ、やっぱりパッケージとして愛でることができるのが大きいですよね。曲を聴くだけなら、そのデータがあれば済むことだけど、音楽を聴くために、レコードをプレイヤーに乗せて、針を丁寧に落とす。コーヒーでも飲みながら音楽を聴いて、ジャケットを眺めがら、紙の質感を感じたり匂いを嗅いでみたり……輸入盤特有の紙のペラッペラさがいいなとか、モノとして愛でられることと、音を聴くっていう行為にいろんな儀式っぽい動作が絡んでくるっていうかね。その辺がつきまとうことで、音楽の聴き方も変わってくる。LPレコードなんかは、ちょっとピンとこない曲でも、飛ばすのが億劫なんでそのまま我慢して聴くことが多い。そうすると、あまり好きじゃないって思ってた曲が、地味だけどずっと飽きないいい曲だった、なんて発見もあったりして。単純に曲を集めたものがアルバムっていうんじゃなくて、時間をかけて物語の起承転結を味わっていく上では、レコードっていうのはすごく適してるなって思いますね。うん、アナログレコードは、音楽を丁寧に聴く仕組みになってるなって思うんですよね。

のん 私はレコードが主流の時代に生きてないので、自分とあまり関係がない、特別なところにあるものだと感じてたんです。でも、今回自分で立ち上げたレーベルから、自分の歌った曲をアナログレコードで出せたことで、グッと近い存在になったような気がします。堀込さんもおっしゃってましたけど、音楽を特別に感じながら聴くって感覚が、日常的にあったらすごく素敵ですよね。レコードと一緒に生活していく感覚を、すごく味わいたいなって思いました。


──さて、お二人のつながりをあらためて整理すると、のんさんが出演したLINEのCMに堀込さんが作詞・作曲したキリンジ「エイリアンズ」が起用されて。その後、堀込さんがプロデュースにより、のんさんが「エイリアンズ」をアコースティック・ヴァージョンでカヴァーされました。歌唱指導も堀込さんが直接担当されていましたが、堀込さんの先生っぷりはいかがでしたか?

のん 堀込さんは練習の時も、すごく丁寧に教えてくださって。「エイリアンズ」の歌詞の流れや背景について訊いたら、すごく素敵に説明してくださったのも印象に残ってます。


──練習中の動画が公開されていますが、なんとなく二人の雰囲気が似てるなって気がしました。

堀込 僕もまあまあ人見知りな方で、のんさんも緊張しいなところがあるから。のんさんは練習の途中、深呼吸をしに部屋を出ることがあるんです。一旦外に出てリラックスしてから、また戻って練習を再開するっていう。

のん 最初のレッスンの日から深呼吸タイムを挟むようにしてたんですけど、レコーディングの時には堀込さんから「深呼吸大丈夫?」って聞いてくださるようになって。なので、深呼吸タイムしやすくなりました(笑)。自分でもちょうど深呼吸がしたいなって思ってる時に入れてくださるので、すごくありがたかったです。

堀込 そのへんは一応ね。リラックスしてやってもらうのが一番いいと思うし、あと集中力を切らさないようにとか。自分にとっても初のプロデュースだったので、そういうサウンド以外のところも気をつけました。

のん ありがとうございます!

堀込 のんさんは、こういうレコーディングって初めてだったんでしょ?

のん そうですね。以前、ドラマの役として歌った時にレコーディングしたことはあったんですけど、役がついてない状態で歌ってレコーディングするのは初めてで。なので、めちゃめちゃ緊張しました。でも、めちゃめちゃ刺激的で楽しかったです。レコーディング当日、全部終わったー! と思ったら、堀込さんが「ハモりも入れようか」っておっしゃって。

堀込 そこはちょっと無理させちゃったかもね。最初は主旋律を歌ってもらうだけでいいかなって思ったけど、アコギと歌を中心にしたシンプルなアレンジになると思ったので、コーラスも一応もらっておこうと、最後の最後に歌ってもらったんです。それもちょっと口頭で説明しただけで、のんさんはスムーズにやってくれて。

のん えっ!? 本当ですか? よかったぁ。

堀込 いい感じだったし、録音してる最中から「これはアレンジに組み込むことができるな」って思って。なので、録ったコーラスは全部採用されてます。

のん 完成した曲もすごく素敵に仕上げてくださって、ありがとうございます!


──プロデュースを担当されて、のんさんのヴォーカリストとしての魅力をどんなところに感じましたか?

堀込 本人も音楽好きということもあって、僕が想像した以上にいろんな歌い方ができるんだなというのが印象的でしたね。


──歌い方や声質でいろんな表情をつけられるような?

堀込 そうですね。練習を重ねていくうちに上手くなりつつ、のんさんの歌い方が少しずつ変化していったところもあった。だけど、ただ上手に声がしっかり出て歌えてればいいかというと、そうでもない。とくに今回のカヴァーはシンプルなアレンジなので、歌に関してはとくにそういう部分が大事になってくる。そこでレコーディングの日、のんさんに一回歌ってもらった後に、彼女が歌の指導をはじめて間もない頃のテイクと、今録ったものをその場で聴き比べてもらったんです。そうしたら教えて間もない頃の歌のほうが、歌い込んだ上手さというよりも、丁寧に歌った初々しさのようなものが残ってて。「僕は最初の頃のほうが好きなんだけど」と言ったら、彼女も同じ意見だと言ってくれて。じゃあ、その方向であらためて歌ってみましょうということになったんです。でも、だからといって一度声がバーンと出るようになってしまった状態から歌い方をコントロールしていくのって難しいことなんですよね。だけど彼女は「わかりました」って感じで、その初々しいモードになって歌ってくれた。すごく勘がいいなってわかりましたね。

のん レッスンを積んでいったことで、気持ちの入れ方が変わった感じがしたんです。だから、最初の頃を思い出しながらやりました。それに、ちゃんと音を刻もうとか技術的なことばかり考えちゃってたので。そういうのは気にしないようにしました。


──自分の歌について客観的に見つめ直したり、表情を変えてみせたりできるのは、やっぱり演技の経験が役立ってるのかもしれないですね。

のん そうかもしれないですね。表現方法が違うので、やってる感覚としては別モノなんですけど、使える部分が共通してるところがあったりもするので、すごく役立ってます。演技もただ上手いって感じだとつまらないところがあるので、そういう部分が共通してるんだなとか、自分の中でつながってハッと気づいたりして。


──そもそも「エイリアンズ」という曲については、のんさんはどういう印象をお持ちでしたか?

のん ロマンチックだけど、ちょっと切なくて、胸がキュンとするすごく素敵な曲だなと。LINEのCMをやらせていただいた時に、「エイリアンズ」があのCMのムードを作ってくださったと思うので。

堀込 ああいう斬新なCMに「エイリアンズ」が使われたってこと自体が嬉しかったし、のんさんが歌ったヴァージョンをきっかけに、それまで知らなかった人たちに響いたのも嬉しかったですね。「エイリアンズ」って曲が、今の時代のムードと不思議とリンクしたところもあったのかな。あの曲が持ってる世界観というか、みんなつながってるようだけど、そのつながりが濃いのか薄いのかわからない、みんながみんなエイリアン状態みたいな。

のん あっ! 自分のことでおこがましいんですけど……私、宇宙人って呼ばれたことが何度もあって。それでこの曲にシンパシーを感じたのかも(笑)。

堀込 たしかに、のんちゃんは宇宙人っぽいっていうのはわかりますね。

のん 堀込さんも宇宙人っぽいですよね。宇宙人というか、星と星の間で漂ってるというか。星と一緒にお話しができそう。

堀込 そうですか? じゃあ、今度チャレンジしてみます(笑)。


──のんさんのカヴァーと前後して、堀込さん自身も「エイリアンズ」をラヴァーズ・ロック調にセルフ・カヴァーされました。ライヴで歌ってきたものが、この度12インチ盤としてリリースされました。

堀込 あれも偶然タイミングが重なったというか。自分のライヴで「エイリアンズ」をやるにあたって、キリンジの時のヴァージョンと同じことをやってもしょうがないと思ってたんです。スタッフからラヴァーズっぽくしてみたら?という提案もあって、それだったら新鮮な気持ちでできるかもと思ってね。ライヴのバンド・メンバーと一緒にアレンジを作り上げていったんですけど、ライヴを重ねるごとにアレンジも変わっていって、今のカタチになった。その熱が冷めないうちにレコーディングしました。


──最初「エイリアンズ」がラヴァーズ・ロック調にリアレンジされたと聞いた時は、どんな仕上がりになったのか想像つかなったんですが、実際にライヴで聴かせていただいて、楽曲とレゲエ・アレンジとの素晴らしいハマり具合に感激しました。

堀込 自分としては新曲がもう1個できたなってぐらいの気持ちです。不思議と印象も変わりますね。レゲエにしたことで、ちょっと雰囲気が大人っぽくなったりして、歌詞の甘い部分もよりムーディーになったり。それに、みんなで聴いて楽しむヴァージョンになったかなとも思うんですよね。オリジナルは一人に向けて書いてるというか、それぞれに向けて発信してるようなイメージなんだけど、ラヴァーズのほうは人が集まる場所で流れてほしいなって思いながらレコーディングしました。


──堀込さんに関したところでいえば、これまでキリンジやソロ・ユニット〈馬の骨〉のアルバムもアナログ盤としてリイシューされてきました。今回のレコードの日でも、キリンジの『スウィートソウルep』LP盤や、「YOU AND ME/乳房の勾配」の7インチがアナログ化されます。ご自身の作品がアナログ盤としてリイシューされることについては、どんな感慨がありますか?

堀込 アナログ化を待望してくれる人がいるのはありがたいし、それを買ってくれる人がいて嬉しいなって思ってます。なんだけど、やっぱり昔の作品なので、僕が気に入ってないところもあるんですよね。それをまた新たな人に聴かれるのかって思うと、ちょっと複雑な気持ちがあるといえばある。できることなら、もう一度ミックスダウンしたいとか、歌を録り直したいとか思ったりもしますよね。


──なるほど(笑)。

堀込 僕の世代は、それまでアナログレコードが普通に流通していて。中学生ぐらいからCDに移行して、デビューした頃には完全にCDの時代になってたんだけど、CDのサイズでしか出回ってなかったものがアナログのサイズになって再発されるっていうのは、ちょっと面白いですね。自分のものじゃないみたいにも見えるし、だけどここには自分の音楽が詰まってるわけで。でもまあ、とりあえず『3』のジャケットはデカくしなくていいと思いましたけど(笑)。


──のんさんはKAIWA(RE)CORDというレーベルを立ち上げて、9月に「タイムマシンにおねがい/I LIKE YOU」を7インチ・シングルでリリースされました。のんさんがレーベルをはじめようと思ったきっかけは?

のん 中学生の時に友だちとバンドを組んでいたんですが、その時の熱が忘れられなくて。だけど興味はありつつも、なかなか音楽はやれていなくて。去年初めて自分で曲を作ったんです。自分で曲を作るなんて思ってなかったんですけど、それから少しずつ作曲をはじめて。それでちょっと嬉しくなっちゃって興味がぐっと湧いて、意欲的になったのがきっかけです。自由に突き進みたいと思ったので、だったら自分のレーベルという形でやろうと。ジャケットとかも少しはっちゃけた感じにしたり、レーベルの部分の色を考えたりするのもすごく楽しくて。


──ちなみにKAIWA(RE)CORDというレーベル名は、どういう意味が込められてるんですか?

のん 私がお話しするのが苦手なんですが、あえて会話(KAIWA)をつけてみたんです。音楽でなら会話できるかも?みたいな感じで。最初レーベル名を考えてた時は〈のんトラボルタ〉っていうのも考えてたんですけど。そういうダジャレみたいな面白おかしい感じで、楽しくパワフルな活動ができたらいいなって思ってます。


──最初のリリースで「タイムマシンにおねがい」「I LIKE YOU」を選曲した理由は?

のん ボイストレーニングのレッスンをはじめた時に、「タイムマシンにお願い」をずっと歌ってて。女の子のパワーが爆発してる感じが、自分の中ですごくフィットしたんです。「I LIKE YOU」は、私が忌野清志郎さんにすごく憧れていて、ものまねとかもやっていたので、RCサクセションの曲からカヴァーさせていただきました。いくつか候補があったんですけど、「I LIKE YOU」は「HA HA HA HA HA」っていう笑い声が入ってる感じがフィットしたので。


──2曲ともバック・ミュージシャンがすごく豪華な方々が参加されていますね。

のん みなさん集まってくださって、すごいですよね。レコーディングはめちゃめちゃ緊張しましたけど、はじまってしまうと楽しくなってくるので。「エイリアンズ」の時もそうだったんですけど、深呼吸タイムを挟めばなんとかがんばれるので。なので、深呼吸タイムをこまめにとってレコーディングに挑みました(笑)


──今後は自分で作った曲も出していきたい?

のん そうですね、いいものができれば(笑)。


──では最後に、レーベルも作って新たに音楽活動をはじめたのんさんに、堀込先輩からアドバイスをいただけますか?

のん わーっ、お願いします!

堀込 曲作りに関しては、どんどんやっていたらいいと思いますね。とりあえず1曲きちんとカタチにすることが大事。途中でやめないで1曲を最後まで完成させる行為をやっていくと、たぶんどんどん上達していくと思いますね。あとは1曲を作り終わった後に、気に入らない箇所を変えていけば、自ずと自分の気に入ったものになるから。物怖じせずに、どんどん作っていってくれたらいいなって思います。


──「エイリアンズ」はアコースティカルなアレンジでしたが、いずれは堀込さんプロデュースでバンド・サウンドの楽曲も聴いてみたいですね。

堀込 うん、のんちゃんが好きな感じのことを推し進めるのか、あるいはこういう感じもいいんじゃない?って提案するカタチか。チャンスもらえれば、ぜひ何かやってみたいです。

のん やったー! その言葉、ちゃんと聞きましたからね!(笑)。


 


■堀込泰行 作品情報

堀込泰行『GOOD VIBRATIONS』(LP)

新進気鋭アーティストとの豪華コラボ盤

LABEL:
日本コロムビア
品番:
COJA-9329
価格(税抜):
3,000円
発売日:
2017年11月22日(水)

トラックリスト:
1. EYE + D.A.N.
2. THE FLY + tofubeats
3. バース・コーラス + □□□
4. Beautiful Dreamers + シャムキャッツ
5. Dependent Dreamers + WONK
6. エイリアンズ(Lovers Version)

YASUYUKI HORIGOME + D.A.N.「EYE」(7inch)

「レコードの日」アイテム!!!

LABEL:
日本コロムビア
品番:
COKA-54
価格(税抜):
1,389円

トラックリスト:
1. EYE + D.A.N.
2. THE FLY + tofubeats
3. バース・コーラス + □□□
4. Beautiful Dreamers + シャムキャッツ
5. Dependent Dreamers + WONK
6. エイリアンズ(Lovers Version)


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■キリンジ 作品情報

キリンジ「スウィートソウルep」(LP)

「レコードの日」アイテム!!!

LABEL:
ユニバーサル ミュージック合同会社
品番:
UPJY-9071
価格(税抜):
2,500円


商品情報はこちら


キリンジ / 冨田恵一 feat. キリンジ「”YOU AND ME / 乳房の勾配」(7inch)

「レコードの日」アイテム!!!

LABEL:
ユニバーサル ミュージック合同会社
品番:
UPKY-9009
価格(税抜):
1,800円


商品情報はこちら


■のん 作品情報


のん「タイムマシンにおねがい/I LIKE YOU<数量限定盤>」(7inch)

NOW ON SALE!!!

LABEL:
KAIWA(RE)CORD
品番:
KRCA-00001
価格(税抜):
2,000円
 
 

 
 
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